前回の記事では、将棋における「棋風」について、
その概念などをご紹介しました。

今回はその続きとなっています。

将棋のプロ棋士には、さまざま棋風の人がいます。

攻め重視だったり、守り重視だったり、
安全勝ちを目指すタイプもいれば、
チャンスと見れば一気に踏み込むタイプもいます。

プロ棋士の中でもトップクラスに位置するA級棋士と呼ばれる人たちでさえも、
それぞれ棋風は異なっており、棋風自体には優劣をつける事はできません。

なぜならば、棋風というのは、性格であり、人格そのものだからです。

そして、それを具体的に将棋盤上で表現するための方法として、
戦法」というものがあります。

戦法には多くの種類があり、代表的なものを幾つか上げると、
居飛車、振り飛車、矢倉、穴熊、腰掛銀、横歩取り、
などなど。。。

プロ棋士たちは、そうした戦法の中から、
自分の棋風に合っている戦法を選択する事で
自分にとって有利な局面に持ち込み、
勝てる確率を高くするように努力しているわけです。

ですので、多くの棋士は自分の得意な戦法、よく指す戦法、
というものを持っています。
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しかし、得意な戦法を持っているからといって、
年がら年中、その戦法ばかりを指しているわけではありません。

まぁ、戦法選択というのは、対局相手の戦法選択にも左右される部分もあるので、
一概に言う事はできないですが、
例えば、矢倉戦法が得意だからといって、
プロ棋士になってから、ずっと矢倉戦法ばかりを指している棋士はいません。

対局相手との相性だったり、その時代の流行りの戦法を考慮したり、
もしくは単なる気分転換として、
普段用いていない戦法を採用する事も当然あります。

そしてその際、普段用いていない、得意でない戦法で戦ったからといって、
極端に勝率が悪くなるのかというと、決してそういう訳ではありません。

強い棋士というのは、自分の得意な戦法で戦わなくても、
それなりに高い勝率を維持する事ができます。

それはなぜかというと、、、

たとえ戦法が変わったとしても、
その人が長年培ってきた棋風については、何ら変わっていないからです。

先ほど、棋風とは、性格であり、人格そのものだと言いました。

子供の頃から数えきれないほど将棋を指してきた経験によって裏打ちされた、
勝ちへ導くための思考パターンが確立されていて、
それが棋風に忠実に反映されている棋士ほど強いんです。

それに対して、将棋における戦法というのは、
本格的な戦いの前段階の導入部分であり、
枝葉の部分であり、
きっかけに過ぎません。
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表面的な部分(戦法)をいくら変えたとしても、
内面(棋風)が確立されていれば、結局は勝ててしまうんです。

前回の記事でも紹介した、
A級棋士の一人であり、タイトルホルダーでもある渡辺明二冠は、
戦法的には居飛車を好んで指し、振り飛車はめったに指す事はありません。

しかし過去には、渡辺明二冠は以下のようなことを仰っていました。

「私は居飛車党ですが、
 たまに振り飛車を混ぜるという可能性はあるかもしれません。
 ただあくまで戦法選択の話で、大元の棋風はそう変わらないでしょう」

将棋を覚えたての人、アマチュアの人、初心者の人ほど、
枝葉の部分である戦法に固執してしまう傾向にあります。

重要なのは、勝ちへ導くための思考パターンであり、
それが棋風にしっかりと反映されているかどうかです。

逆にいえば、棋風さえ確立されていてば、戦法なんてどうでもいいんですね。

To Be Continued…