ちょっと前には”相場観“についての記事も書きましたが、
それの続きというわけではないですが、今回は”裁量“を取り上げてみたいと思います。

一応、興味のある方は先に相場観の記事を読んでみて下さい。

裁量も相場観と同様に抽象的なイメージがあるので、
その感覚を掴む事はなかなか難しいですね。

再度確認ですが、私の場合は

  • 相場観は、ファンダメンタルを中心とした長期的な環境認識への自己解釈
  • 裁量は、テクニカルを中心とした短期的なトレードへの自己判断

と定義しています。

では、その裁量という抽象的な感覚は
トレードで利益を上げるためには必要なんでしょうか?

個人的な見解を述べておきます。

分かる人にしか分からない感覚?

裁量って感覚を言葉にするのってとても難しいですね。

単なる言葉の定義ならばネットで調べれば

人の考えによって判断し、処理すること

と出てきますが、では、

なぜそのような裁量判断をその状況で行ったのか

となると、自分でも正確に言葉で説明するのって困難な場合が多いです。

でもこれは、FXという特定の分野だけではなく、
いろんな分野で使われている感覚です。

例えば絵画を見て、

この色彩感覚は素晴らしい!

と思って人に伝えたとしても、「どこが?」となる場合も多いです。

いくらその良さを分かっていても(つもりでも)、
他の人に言葉で全てを正確に伝えるのは困難でしょう。

仮に、1から10まで全て正確に伝える事ができたとしても、
それが絵の正解などではなく、ひとつの見解に過ぎません。

また、音楽を聴いて

このメロディーは心に響く!

と思って人に伝えたとしても、「どこが?」となる場合も多いです。

いくらその良さを分かっていても(つもりでも)、
他の人に言葉で全てを正確に伝えるのは困難でしょう。

仮に、1から10まで全て正確に伝える事ができたとしても、
それが音楽の正解などではなく、ひとつの見解に過ぎません。

分かる人にしか分からない感覚というものがありますし、
分かる人でも言葉にできない感覚というものもありますし、
言葉にできたからと言って、それが正解というわけでもありません。

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バットをグゥーッと構えて腰をガッとする

プロ野球巨人の終身名誉監督である長嶋茂雄氏の独特の感覚は
一般人には理解しがたいものと捉えられて、
今でもネタにされる事がありますね。

長嶋氏からバッティングの指導を受けると、

ボールがスッと来たら、バットをカーンと振れば良いんだよ
バットをグゥーッと構えて腰をガッとする

このようなフレーズは有名ですね。

現役のプロ野球選手でもこのような感覚的な表現は理解しづらかったそうですが、
でも、一部の選手には非常に分かりやすいと好評だったようです。

バッティングというものを1から10まで全て論理立てて
説明できるものなのかは分かりませんが、
長嶋氏のようなバッティング感覚に共感できる選手も少なからず存在していて、
そしてその指導の結果、成績が向上した選手もいたんですね。

私はこれまで多くのFX商材を購入してきましたが、その中には、
自身のリアルトレードを解説している動画を提供しているものもあります。

代表的なのは、マエストロFXやFXビクトリーメソッドですね。

これらの商材では、著者である佐野裕さんによる
リアルトレード実況動画が毎週提供されているんですが、
その中で、佐野裕さんは以下のようなフレーズをよく口にしています。

ローソク足がグイッと勢いよく成長してきて
ジリジリしていますね
なんか上値が重いですね~

ローソク足がグイッとくるとか、ジリジリしているとか、重たいとか。。。

初心者の方にしたら「???」かもしれませんが、
これって先の長嶋氏のバッティング感覚にも通じるものがありますね。

やはり、トレードにおいても分かる人にしかわからない感覚というものがあって、
それを無理矢理言葉にすると、このような擬態語中心の表現になってしまいます。

そして、その表現を聞いた受け手が、
それを分かりやすいと捉えるのか、分かりにくいと捉えるのかは、
その人のそれまでのトレードにおける経験量や学習量や努力の方向性によります。

長嶋氏の表現を理解しづらいと思う選手もいれば、共感できる選手もいるように、
佐野氏の表現を理解しづらいと思うトレーダーもいれば、
共感できるトレーダーもいるでしょう。
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裁量の個人的使用範囲について

先に、
裁量は、テクニカルを中心とした短期的なトレードへの自己判断
と書きました。

別の言い方をすると、
裁量とはトレードロジックの範囲内でフレキシブルに対応できる余地の事
と言い換える事もできます。

同じ形状は二度と現れないチャートという世界においては
ガチガチに固めたルールだけでトレードしていると、
どうしても相場とズレてしまう時の方が多くなります。

裁量というのは、そうした微妙なズレを解消する為に補足的に利用するもの
だと思っています。

例えば私の場合、チャート形状によっては、
自分のトレードロジックの範囲内で、
ストップの位置を浅くしたり、逆に深くしたり、
また、利確を早くしたり、逆に引き延ばしたりする事もあります。

そして、そうした裁量判断がトータルでは功を奏している場合が多いです。

しかし、注意しなければいけないのは、
裁量というのは、規律を失ってしまうと、
その利用範囲がどんどん拡大してしまう危険性があります。

つまり、自分を律する事ができないと、最終的には

何となく上がりそう」「何となく下がりそう

という感覚だけでエントリーしてしまいかねません。

私にとって裁量という感覚は必要不可欠ですが、
だからといってそれがメインとなっているわけではなく、
あくまでも自分のルールの範囲内での利用にとどめています。

自分を律する事ができれば、
裁量は利益を拡大してくれる重要なスキルとなってくれますので、
始めから忌み嫌うのはなく、できるだけ付き合うようにしたいですね。