巷で売られているFX商材やEA(自動売買)の中には、
ナンピンを前提とした手法を提供しているものもありますね。
ナンピンをすれば確かに勝率の向上が見込めますが、
逆にその分、負けた時の損失額は大きくなります。
コツコツ勝ってドカンと負ける、
負け組トレーダーの典型的な収支曲線になるでしょう。
FX初心者のうちは、どのような手法が適切なのか分からないので
ナンピンを用いた手法でもとりあえず試してみる人が大半だと思います。
で、その勝率の良さに魅力を感じて、
なんとかナンピンを駆使して勝ち続ける事ができないか、
といろいろ思案するでしょう。
中には、無限にナンピンを繰り返せば絶対に負けない、
と本気で思っている人もいるようです。
潤沢な資金を持っていて、それに対して雀の涙ほどのほんの僅かなロット数で
最初のエントリーを始める事ができれば、
そういった無限ナンピンで必勝法を作り出せることも可能かもしれませんが、
資金に限りのある私達のような個人トレーダーには、現実的には不可能です。
しかし、こちらの記事で書いたように、ナンピン手法は麻薬性がありますので、
一旦それに手を染めてしまうと、なかなか抜け出すことは困難となります。
ナンピンで間違ったマインドが形成される
とあるEA(自動売買)では、
30回もナンピンをする事を前提にした手法が高勝率だと謳って売られています。
ナンピンの回数を多くすればするほど勝率は上がっていきます。
でもそれは裏を返せば、1回で負けた時の金額が大きくなり、
より破産に近づくことを意味します。
と同時に、トレードに必要な平常心も奪われてしまいます。
例えば、30回ものナンピンをする可能性があるEAを利用するとしましょう。
最初のエントリーが1ロットだとした場合、
ナンピンするたびに同数の取引枚数を追加するとしたら
30回のナンピン後にはロット数は30にまで膨れ上がっています。
最初のエントリー時、1PIPS動く時の金額の増減が1000円だとしたら、
30回ナンピンした後の1PIPS動く時の金額の増減は30000円になってしまいます。
トレーダー毎に許容できる金額量は違ってきて当然ですが、
普通の人間なら、当初予定した金額の30倍もの値動きには耐えられないはずです。
想像してみて下さい。
為替レートは取引が行われる度に、ピコピコとその値を変えていきます。
例えば、USDJPYが102.53円から102.52円へ、
0.01円、つまり1PIPS下げるなんて、ほんの一瞬の出来事です。
その一瞬の値動きが行われる度に、
あなたの資金は常に30000円ずつ増減しています。
EA(自動売買)のナンピンであっても手動のナンピンであっても、
あなたがその現実に目を向けてしまったら、
今の自分の置かれた状況を冷静に受け止める事はできないでしょう。
そして、正しい相場判断もできなくなってしまうでしょう。
大幅な含み損を抱え、当初予定していた何十倍ものロット数を抱え、
いつ破綻するか分からない状況をずっと耐えていなければいけない。。。。
どう考えても勝ち組のマインド、行動ではありませんよね。
心のどこかでナンピンに頼ってしまう自分がいる。。。
でも、ナンピンの麻薬に侵されてしまい、
勝ちにこだわるトレーダーほど懲りない面もあって、こんな事を経験したとしても、
「たまたま運が悪かっただけかも」
と思い、再びナンピン系のFX商材、EAに手を出したりするんですよね。
で、また同じ過ちを繰り返してしまう。。。
ナンピン手法は、なかなか負けないだけに厄介です。
どうしても悪い意味での勝ち癖がついてしまい、
日々増加する資金を見てしまうと、
「負けてしまったらそれまでの時間が無駄になる」
という意識が日を追うごとに薄らいできてしまいます。
ナンピンしないよりもナンピンした方が勝率が良くなるのは当たり前ですが、
勝率だけでなく、仮にトータルの成績として
長期的に勝ち続けられるナンピン手法が存在したとしても、
それでもナンピンはしないほうが良いと個人的には思っています。
なぜならば、
ナンピンという選択肢を持ってしまうと、
つい魔が差して、どんな不利な状況においても、
ナンピンに頼るような精神状態になってしまうからです。
計画的なナンピンだけではなく、
ついルール違反を犯して、あれもこれもとナンピンし出します。
こうした心理状態は私も経験済みです。
多少勝率が悪くなっても、多少成績が悪くなっても、
ナンピンしないで済むのなら、そちらの方が断然良いです。
そのほうが成績とマインドが安定して、長期的にFXを続けられます。
ここ数年の為替市場は落ち着いていますね。
私の7、8年という短いFX歴の中でも、これまで年に1、2度は
背筋の凍るような、理屈で通用しないような、唖然とするような、
セーリングクライマックス的な現象が起きていたものです。
アメリカ同時多発テロ事件
サブプライムローン問題
リーマンショック
ギリシャショック
東日本大震災
などなど。。。
運が良いのか悪いのか、最近FX市場に参加した初心者の方は
これに準じる出来事を経験していないです。
アベノミクスが落ち着いてからのFX市場は、
値動きが比較的緩やかな状態が続いています。
年単位の長期的な視野で見てみると、今のFX市場は凪(なぎ)の状態です。
しかし、いつかは上記のような事件、問題、天災が起ってしまうはずです。
そうした状況においては、
ナンピンで買い下がり、売り上がりをすれば、確実に破たんします。
数年かけて積み上げてきた資金は、
上記のような出来事に遭遇すれば、たった数日でなくなってしまうでしょう。
現実にも、たとえ勝率99%の手法であっても、
たった1回の負け、たった1回の負けで
全てを無くすトレーダーは山ほどいます。
そして、そうしたトレーダーのほとんどはナンピン手法を採用しています。
もちろん最終的な判断はあなたにお任せしますが、
FX商材、EAなどを選ぶ場合は、
ナンピン前提の手法を採用しているものは選ばない方が無難です。
勝率にこだわる事への悪癖の影響を、もう一度自分の中で考え直してください。