私はこれまで何度となく
「トレンドに沿ってエントリーしましょう」
「トレンドがハッキリしている時に仕掛けましょう」
と本ブログで主張してきました。

しかし、幾ら文章で書いたとしても、
トレンドに従うことの優位性が数値的にどの程度なのか、
どのくらい成績が向上するのか、を実感することは難しいでしょう。

そこで今回の記事では、
トレンドに従うことでどのくらい成績が良くなるのか、
具体的な数値とグラフでお見せしたいと思います。

トレンド計測といえば移動平均線とダウ理論が一般的

トレンドといってもその考え方や定義はトレーダー毎に異なってきますが、
多くのトレーダーが利用しているであろう一般的なトレンド計測方法といえば、
移動平均線とダウ理論を挙げることができるでしょう。

私も裁量トレード、及び、EA(自動売買)を行う際には、
移動平均線 or ダウ理論、もしくはその両方を用いています。

移動平均線をトレンド計測に利用する一般的な方法

移動平均線をトレンド計測に利用する一般的な方法は、
移動平均線が上向きでその上に価格がある時にロングしましょう。
移動平均線が下向きでその下に価格がある時にショートしましょう。

でしょうか。

もう少し具体的な使い方の例を挙げると…

5分足でトレードする場合、
環境認識として1時間足、4時間足レベルの移動平均線の向きを確認します。
chart25022701
そこで、1時間足のMA20が上を向いていて、且つ、4時間足のMA20も上を向いていて
その上に価格が位置している状態であれば、
現在は上昇トレンドの最中であり、ロングを狙える状況となる。

その状況の時に、5分足レベルの小さい時間足に移行して、
調整で価格が下げて押目を付けたのを確認し、
そこから反転上昇の兆しを見せたら押目買いをする。

同じく、
1時間足のMA20が下を向いていて、且つ、4時間足のMA20も下を向いていて
その下に価格が位置している状態であれば、
現在は下降トレンドの最中であり、ショートを狙える状況となる。

その状況の時に、5分足レベルの小さい時間足に移行して、
調整で価格が上げて戻ってきたのを確認し、
そこから反転下降の兆しを見せたら戻り売りをする。

などが考えられます。

ダウ理論をトレンド計測に利用する一般的な方法

ダウ理論をトレンド計測に利用する一般的な方法は、
ローソク足の並びが高値切り上げ安値切り上げの時にロングしましょう。
ローソク足の並びが高値切り下げ安値切り下げの時にショートしましょう。

でしょうか。

もう少し具体的な使い方の例を挙げると…

5分足でトレードする場合、
環境認識として1時間足、4時間足レベルのダウ理論の状態を確認します。
chart25022702
そこで、1時間足と4時間足のローソク足の並びが、
高値切上げ、且つ、安値切り上げ状態であれば、
現在は上昇トレンドの最中であり、ロングを狙える状況となる。

その状況の時に、5分足レベルの小さい時間足に移行して、
調整で価格が下げて押目を付けたのを確認し、
そこから反転上昇の兆しを見せたら押目買いをする。

同じく、
1時間足と4時間足のローソク足の並びが、
高値切下げ、且つ、安値切り下げ状態であれば、
現在は下降トレンドの最中であり、ショートを狙える状況となる。

その状況の時に、5分足レベルの小さい時間足に移行して、
調整で価格が上げて戻ったのを確認し、
そこから反転下降の兆しを見せたら戻り売りをする。

などが考えられます。

トレンド計測の有り無しでどのくらい成績が違ってくるのか?

では、上記のトレード手法でトレンド計測をしなかったらどうなるでしょうか?

つまり、1時間足レベル、4時間足レベルでの移動平均線の傾きを全く考えず、
また、1時間足レベル、4時間足レベルでのダウ理論での高値と安値の並びを全く考えず、
ただ、5分足チャートだけを見て、押目でロング、戻りでショートをした場合です。

5分足だけしか見ていないので、手法としては簡単です。
しかし、それだと本当にトレード成績は悪くなるんでしょうか。

トレンドをロジックに組み込んだ手法でのトレード成績と
トレンドをロジックに組み込んでいない手法でのトレード成績の違いを
偏見無く、且つ、公平に比較検討するための手段としては、
EA(自動売買)にして結果を確認するのが最も妥当でしょう。

そこで以下では、
私が実際に押目買い/戻り売り手法をプログラミングしEA化してみましたので、
順を追ってトレード成績を確認してみることにします。

まずは、1時間足レベル、4時間足レベルのトレンド計測をせず、
ただ5分足だけを見て押目買い/戻り売りをした場合です。
(以下に掲載しているトレード成績は、全てUSDJPYの5分足チャートで、
 2008年から16年10ヶ月間に統一しています)

5分足だけの押目買い/戻り売りのトレード成績

tester25022703
注目すべき項目に赤色ラインを引いています。
純益=5495.39
プロフィットファクター=1.06
総取引数=5923
最大ドローダウン=3893.03(25.88%)

プロフィットファクターが1.06であり、
期待値>1なので収益自体はプラスになっていますが、
あまり高い数値とは言えないです。

収益グラフも右肩上がりではありますが、上下動のブレが大きくて不安定であり、
得意な相場と不得意な相場がハッキリと別れています。

このグラフは16年10ヶ月分ですが、
途中、年単位で下がり続けている期間もあり、
最大ドローダウンが大きくて、安定性に欠ける印象、
この手法は裁量としてもEAとしても合格点を上げる事はできませんね。

では、この5分足だけの押目買い/戻り売り手法に
1時間足レベル、4時間足レベルのトレンドを条件に加えてみましょう。

具体的には、1時間足レベルのMA20、4時間足レベルのMA20を見て
それらが上向きでそのラインの上に価格がある時だけロングする、
それらが下向きでそのラインの下に価格がある時だけショートする、
という条件を加えてみたらトレード成績はどのように変わるでしょうか。

1時間足レベル、4時間足レベルの移動平均線を加えたトレード成績

tester25022704
注目すべき項目に赤色ラインを引いています。
純益=14659.54
プロフィットファクター=1.22
総取引数=4742
最大ドローダウン=1218.14(6.71%)

先のトレード成績と比較すると、総取引数が1000回ほど減りましたが、
純益とプロフィットファクターが大幅に上昇、
対して、最大ドローダウンは大きく減少して安定性が増しました。

つまり、1000回ほど取引回数が減ったのは、
大きな時間足のトレンドに沿っていなかった分のトレーディングが無くなったわけです。

収益グラフを確認すると、大きな落ち込みが無くなり、
全般、右肩上がりになって安定性が増した印象、
この手法であれば裁量としてもEAとしても及第点を上げる事ができます。

では、ここまで改善した押目買い/戻り売り手法に
更に、ダウ理論に基づくトレンドを条件に加えてみましょう。

具体的には、1時間足レベル、4時間足レベルのローソク足の並びを見て、
高値切上げ、且つ、安値切り上げの時だけロングする、
高値切下げ、且つ、安値切り下げの時だけショートする、
という条件を加えてみたらトレード成績はどのように変わるでしょうか。

更に、ダウ理論を加えたトレード成績

tester25022705
注目すべき項目に赤色ラインを引いています。
純益=16063.02
プロフィットファクター=1.37
総取引数=3152
最大ドローダウン=1009.11(7.09%)

移動平均線とはその名の通り価格の平均値を繋いだラインなので、
実際の価格は見ていません。

それに対して、ダウ理論は価格の高値安値を見て判断するので
チャートパターンに基づくトレンド判断とも言えます。

つまり、高値と安値の並びが規則的で綺麗であれば
それだけトレーディングもやり易く、効きやすくなります。

先のトレード成績と比較すると、総取引数が1600回ほど減っていますが、
これはトレンドが綺麗でない、いわゆる、
高値と安値が不揃いのチャートパターンでのトレーディングを削除したことになります。

その結果、総取引数がこれだけ減ったにも関わらず、
純益とプロフィットファクターは更に増加しました。

収益グラフもより綺麗で、より滑らかな右肩上がりの曲線になったので、
この手法であれば裁量としてもEAとしても十分な合格点を上げる事ができます。

以下、これらの結果をまとめると…

総取引数 純益 プロフィットファクター 最大ドローダウン
トレンド計測無し 5923 5495.39 1.06 3893.03(25.88%)
移動平均線のみ 4742 14659.54 1.22 1218.14(6.71%)
移動平均線+ダウ理論 3152 16063.02 1.37 1009.11(7.09%)

トレンドを加味した時にどれだけ成績が向上するのか一目瞭然ですね。

さて…ここまで数値とグラフで明確に示せば、
トレンドに従うことの優位性を心から納得できたのではないでしょうか?

押目買い/戻り売りの手法といっても、そのやり方はトレーダー毎に無数に存在します。

私も様々な押目買い/戻り売りの手法を試し、開発してきましたが、
必ず大きな時間足の方向性はロジックに組み込むようにしています。

それは裁量トレードをする場合でも、EA(自動売買)をする場合でも同じです。

なぜなら、
順張り系、トレンドフォローの手法であるならば、
大きな時間足の流れに沿うという条件を組み込んだ方が、
ほぼ100%成績が良くなるからです。

これは私の長年のトレード歴、EA歴による明確な事実です。

あなたも手法を構築する際には必ず大きな時間足の流れを確認し
それをロジックに組み込むようにしてください。
そうすれば、必ず成績は向上するでしょう。