金(ゴールド)の価格が急騰しています。
金(ゴールド)に関しては過去に
「金(ゴールド)の急騰とその継続性~円を持つのではなく資産を持つ」
というタイトルで2020年8月に記事にしました。
この時は、当時の史上最高値を更新し、ドルベースでは1900ドルを突破、円ベースでは7000円を突破し、
この上昇がいつまで続くのか、私達個人投資家はゴールドを持つべきなのか、
について個人的な見解を書きました。
あれから5年が経過しましたが…
どんな金融商品でも良いです。
現物でも、投資信託でも、ETFでも、積立てでも、関連企業でも…
あなたは何らかの形でゴールドを買いましたか?
ゴールドを資産の一部に振り分けましたか?
ちなみに、この記事を書いている時点でのゴールドの価格は
ドルベースで4100ドル以上となっており当時からは2倍以上、
円ベースでは22000円以上となっており当時からは3倍以上になっています。
さすがにここまで上がるのは予想外でしたが
先の記事の中で書いた当時のファンダメンタルズを考えれば、
そして、その継続性や政治的背景を考えれば、
ゴールドが上昇するのは、ある意味必然だったと言えるでしょう。

金(ゴールド)急騰に関連する5つのファンダメンタルズ要因
5年前にゴールドが上昇した要因は、
新型コロナウィルスで世界経済が停滞している中での量的緩和、米中対立でした。
それが現在ではどのように変化したのか、
ファンダメンタルズ要因を改めてアップデートしておきます。
- ウクライナ戦争、ガザ紛争
- トランプ大統領による関税政策
- 中央銀行による金保有量の増加
- 基軸通貨であるドルの信用低下
- FRBによる利下げサイクルのムード
ゴールドの上昇には大小様々な要因が考えられ、また、どの要因も独立して存在しているわけではなく、
それぞれが複雑に絡み合っていて切り分けするのは難しいんですが、
代表的な要因としては上記の5つを挙げることができるでしょう。
ウクライナ戦争、ガザ紛争
地政学リスクが発生すれば、まずはリスク回避として、金が選好される傾向がありますが、
現在のウクライナ戦争、ガザ紛争などはその典型的な代表例でしょう。
よく”有事の金“と言われますが、このような地政学リスクの長期化は
不安定な世界情勢の中で、資金の安全な避難先としてゴールドの需要を押し上げていきます。
トランプ大統領による関税政策
トランプ大統領の突発的な発言や一貫性のない発言は、市場の予測や思惑を困難にしています。
特に関税政策に関しては、中国との貿易摩擦を一段階上のレベルに引き上げ、
また、同盟国に対しても外交的混乱を招いています。
さらに、パウエルFRB議長に対する利下げ強要など、
FRBの独立性を無視した発言が”トランプリスク“として捉えられています。
つまり、トランプ大統領自身がリスクそのものであり、
その存在自体がゴールドの価格を押し上げる要因になっています。
中央銀行による金保有量の増加
ロシアや中国を中心に世界各国の中央銀行が外貨準備金の一部を
ドルからゴールドへシフトする動きが継続しています。
その背景にはウクライナ戦争を契機としたドル支配への警戒感があります。
つまり、戦争が起きると米国が経済制裁を行い、
戦争当事国のドル資産が凍結される危険性が現実化したことで
各国は米国に左右されない資産としてゴールドを選好するようになったわけです。
基軸通貨であるドルの信用低下
米国は巨額の財政赤字を抱え、国債発行も膨れ上がっています。
更に、毎年の恒例行事のように起きる債務上限問題など、
米国自身の信用リスクが意識されるようになってきています。
また、世界的なドル決済システムから逃れるために、
BRICSではゴールドを担保にした新通貨構想もあります。
つまり、BRICSではドル依存から脱却する動きを鮮明にしており、
率先して意図的にドルの信用低下を狙っています。
FRBによる利下げサイクルのムード
米国の金利動向はゴールドの価格に直接的な影響を与える要因です。
FRBが利下げ方針に転じると金利を生まないゴールドの魅力が相対的に高まります。
現在の米国は雇用が弱まっている兆しが見えており、
インフレが高止まりしているにも関わらず、利下げを実施、
そして今年から来年にかけて更に複数回の利下げが行われる公算となっており、
それがゴールドを選好させる要因となっています。
以上、ゴールドが買われるファンダメンタルズ的な5つの要因でした。
今から金(ゴールド)を買っても良いのか?
最近になって読者様から
「今からゴールドを買っても大丈夫ですか?」
という主旨のメールを頂くようになりました。
ニュースで金(ゴールド)が取り上げられる機会も増えており、
それに比例してインフレヘッジの重要性に気付く方が増えたようですが、
まずは長期的なチャートを確認してみましょう。
金(ゴールド)の月足チャート

ここ2年ほどの急騰ぶりはちょっと異常ですね。
しかし、ファンダメンタルズを考えれば当然ということもできます。
テクニカルな立場から判断すると、ここから買うことはしないでしょう。
なぜなら、買われ過ぎてチャートが反り上がっており、且つ、直近では長い上ヒゲが出現しているので、
一旦の天井を示唆している可能性があるからです。
しかし、今までゴールドを持っていない方が
あくまでも資産配分として、インフレヘッジとしてゴールドを持ちたいとするならば、
チャートの形状に関わらず買っておくべきだとは思います。
ではどのような方法で買えば良いのかというと、
やはり、純金積立が王道でしょう。
「資産の1割はゴールドを持つべき」
というステレオタイプ的な思考を信じて一気にまとめて買ってしまうと、
それこそ急落した時に資産価値が大きく目減りしてしまいます。
ここからのチャートでは乱高下も考えられるので、純金積立をして買値を均し、
少しずつ時間をかけながら、ゴールドの配分を増やしていくのが良いでしょう。
もしくは、できるだけ安く買いたいのなら、そして、チャートを見る時間もあるのなら、
下がったところで手動で不定期に買っていく方法も有りです。
先にも書きましたが、
ここからは大口の利確売りで大きく下げる場面もありそうなので、
RSIなどのインジケーターを参考にして、日足レベル、4時間足レベルで売られ過ぎになった場面で
ゴールド関連のETFをコツコツと買っていくのも良いでしょう。
金(ゴールド)の4時間足チャート

「上がり続けると、急落が怖くて買えない」
「下がり続けると、もっと下がるのが怖くて買えない」
上がっても下がっても怖い…
どこかのタイミングで自分のルールで入るしかありません。
金(ゴールド)の将来的な展望
ここまで上がってしまうと
「もうそろそろ天井ではないか」
と思うかもしれませんが、天井は誰にも分かりません。
ここから年レベルで下がり続けるかもしれませんし、
まだまだ年レベルで上がり続けるかもしれません。
しかし、先に挙げた5つのファンダメンタルズ要因を考慮すると、
私はどちらかというとまだ上がり続けるのではないかと思っています。
ウクライナ戦争、ガザ紛争
ウクライナ戦争、ガザ紛争は終わりが見えません。
仮にこれらの戦争、紛争が終わったとしても、
残念ながら、世界ではまた新たな戦争、紛争が必ず起こります。
地政学リスクは今後も無くならないと思ってよいでしょう。
トランプ大統領による関税政策
トランプ大統領自身がリスクそのもの、ということは、
トランプ大統領が4年後に任期を終えれば、そのリスクは消えることになります。
おそらくですが、今のトランプ大統領の政策を考えれば、
4年後の大統領選挙では共和党は負けるでしょう。
となれば、今の関税政策などトランプ大統領が行っている多くの政策は、
民主党によってことごとく覆される可能性もあります。
4年後のことなので正直どうなるか分かりませんが、
このシナリオが正しければゴールドの価格にはマイナスでしょう。
中央銀行による金保有量の増加
ウクライナ戦争を契機としたドル支配からの脱却は今後も続くでしょう。
今回のトランプ大統領の凍結政策によって「ドル依存は危険」という認識が世界中に広がったので。
トランプ大統領の任期が終わってもその流れは変わらないでしょう。
地政学リスク、インフレ対策、資産保全という観点でも
中央銀行はゴールドを選び続ける可能性が高いです。
基軸通貨であるドルの信用低下
歴史的に見ると、基軸通貨はその時の世界経済によって変化しています。
今はドルが基軸通貨ですが、米国の財政状況や政治の力関係によって
少しずつ変わっていく可能性があります。
特に東側諸国や新興国はドルの信用低下を望んでおり、
その受け皿としてゴールドを選択する傾向あり、その流れは今後も続くでしょう。
FRBによる利下げサイクルのムード
景気動向によってFRBは金利を上げたり下げたりします。
今は利下げサイクルのようですが、いつかは利上げサイクルに変わります。
そして、これまでのように利上げと利下げを繰り返していきます。
あくまでもサイクルなので、ゴールドの価格に与える影響は長期的にはプラマイゼロでしょう。

以上、5つのファンダメンタルズ要因を検討すると、
以下の3つに関しては、長期的、永続的に世界経済の根底に流れ続けるテーマです。
- ウクライナ戦争、ガザ紛争(地政学リスク)
- 中央銀行による金保有量の増加
- 基軸通貨であるドルの信用低下
つまり、常にゴールド買いの圧力が加わり続ける可能性が高いわけです。
アナリストや経済学者によっては、
来年には5000ドル、2030年には7000ドルに到達すると予測している方もいます。
私には具体的な数字は分かりませんが、今月がゴールド価格の頂点だろうと言うのは個人的には疑問符が付きます。
よって、今からゴールドを買っても遅くはないと思いますが、
これまでみたいな急騰を期待するのは難しいかもしれません。
あくまでも資産配分の一角として、且つ、資産保全の目的で
ゴールドに割り振っておくという意識でいましょう。
くれぐれも「ゴールドで儲けてやろう」という意識は持たないように。



