書店で売られているFX関連の参考書を見ると、一般的な売買サインとして、
短期移動平均線と長期移動平均線のクロスを利用した、
「ゴールデンクロスで買い、デッドクロスで売り」
という手法を載せている事が多いですね。
テクニカル的な解説を中心としたFX本では、
まず一番最初に取り上げるような基本的な売買サインです。
参考書では、いかにもこのサインが効果的であるかのような、
都合の良いチャート形状の場面を切り抜いて紹介していますが、
このサインが実際の相場で通用しない事は、全くのFX初心者でなければ、
誰でも経験的に知っているでしょう。
当たり前と言えば当たり前ですよね。
こんな単純なやり方で長期的に安定的に勝てるのなら苦労はないです。
その証拠に、以下にゴールデンクロスで買い、デッドクロスで売り
を繰り返した場合の成績を載せておきます。
具体的には、
USDJPYの5分足チャートで、5本移動平均線(MA5)と25本移動平均線(MA25)が
ゴールデンクロスしたら買いでエントリーし、デッドクロスしたら決済する
というルールです。(ドテンせずに、買いだけのサインです)
それを2009年から直近までの5年間、機械的に繰り返した場合の成績となります。
MetaEditorというMT4専用のプログラミングソフトを使って
上記のルールをプログラミングしたんですが、
それをMT4のストラテジーテスターという機能を使うと、
このように、そのルールでのトレード結果と収益曲線を表示してくれます。
様々な項目がありますが、とりあえず赤ラインで引いた箇所だけを見て下さい。
総損益、プロフィットファクター、期待利得、総取引数
ですね。
総損益とは、5年間運用した場合の合計の損益額です。
-2020.32となっていますので、このルールで5年間トレードを続けたら
収支はマイナスになってしまう、という事です。
プロフィットファクターは0.96となっており、
1以下ですので使えないルールであると分かります。
期待損益とは、一回のトレードにおける平均獲得金額です。
-0.19となっているので、一回トレードする毎に0.19ずつ
損が積み重なっていくわけですね。
総取引数とは、その名の通りトレード回数です。
5年分の5分足チャートのゴールデンクロスですから
10742回と膨大なトレード回数となっています。
その下のグラフは、2009年からトレードした場合の収益曲線です。
上下に波を描きながらも右肩下がりが目立つ曲線となっており、
ほとんどの区間でこのトレードルールが機能していない事が分かります。
逆に、ゴールデンクロスで売り、とした方が良いくらいですね。
(人間の手によって、過去チャートを遡りながら
ひとつひとつゴールデンクロス、デッドクロスの位置を確認して、
そのサインの有効性を検証するのも良いですが、
プログラミングする事ができれば、このようにずっと早く正確に検証できますので、
プログラミング経験者はMetaEditorを勉強してみる価値はあると思いますよ)
この結果を見れば、
ゴールデンクロスしたら買いでエントリーし、デッドクロスしたら決済する
というルールは、ほとんど優位性がない事が分かります。
このように具体的な数字とグラフで見せられると、
“使えないルール”という事が納得できますね。
この記事では、5本移動平均線と25本移動平均線のクロスでの検証でしたが、
それ以外の5本移動平均線と50本移動平均線という組み合わせでも
20本移動平均線と100本移動平均線という組み合わせでも
似たような結果となります。
エントリーと決済のタイミングだけをあれこれ変えてみても
それだけで年レベルの優位性のあるルールは作れません。
これは移動平均線のクロスに限った事ではなく、
参考書に載っているような、
RSI,MACD,ストキャスティクスなどのオシレーター系のサインでも同様です。
パラメーターの数字をあれこれ変更して、
エントリーと決済のタイミングを変えるだけでは
やはり、年単位の安定的な優位性のあるルールは作り出せません。
では、どのようにすれば長期的に機能する、
ドローダウンの少ない安定的な優位性のあるルールを構築できるのか、、、
そのヒントを、次回の記事でもストラテジーテスターを使って
具体的にお見せしたいと思います。
“ゴールデンクロス買い、デッドクロス売りは長期的に機能する?” への1件のフィードバック