短期移動平均線と長期移動平均線がゴールデンクロスしたタイミングで
ロングエントリーして、デッドクロスしたタイミングで決済する。
FXのテクニカル参考書には、必ずと言っていいほど載っている
基本的なトレードルールですが、
これだけで長期的に安定的に勝てるほど相場は甘くありません。
もしあなたが、長短2つの移動平均線の期間パラメーターをあれこれ変えて
トレードルールを構築しようとしているのでしたら止めておきましょう。
前回の記事である、
ゴールデンクロス買い、デッドクロス売りは長期的に機能する?
でも書きましたが、
おそらくそこにはあなたの求めている答えは存在しません。
大きな時間足に従う優位性
移動平均線の期間パラメーターを変更する事より、もっと重要な事は、
大きな時間足のトレンドを把握して、常にその流れの方向へ仕掛ける事です。
いわゆる、マルチタイムフレーム分析によるトレンドフォローですが、
こちらを検証、勉強した方がより効果的です。
でも、多くのトレーダーは、
「マルチタイムフレーム分析が重要なのは理解しているけど、
どの程度の効果があるものなのか、よく分からない」
と思っているでしょう。
そこで今回は、前回の続きとして、
MT4のストラテジーテスターを使って、大きな時間足に従う事の優位性を
グラフと数字で具体的にお見せしたいと思います。
まずは、前回の記事での、USDJPYの5分足チャートにおける
MA5とMA25のゴールデンクロス買い、デッドクロス決済の
5年分の成績を確認しておきましょう。
総損益=-12020.32
PF=0.96
期待利得=-0.19
総取引数=10742
でしたね(詳しくは前回の記事を確認してください)
ではこのルールに、
「30分足のトレンド方向に従う」
というフィルターを付け加えたらどうなるでしょうか。
具体的には、
「30分足の25本移動平均線(MA25)よりレートが上に位置している時だけ
ゴールデンクロスのエントリールールに従う」
とします。
とすると、先の成績は以下のように改善されます。
赤色の下線で引いたところを確認してください。
総損益=+1519.11
PF=1.06
期待利得=+0.28
総取引数=5488
となっています。
30分足の方向性をフィルターに追加したので、総取引数が半減していますが、
総損益は見事にプラスに転換しましたね。
つまり、30分足のトレンド方向に沿って仕掛けていけば、
ゴールデンクロス買い、デッドクロス売りという単純なルールでも
機能する可能性がある、という事です。
こうして具体的に数字の改善を見せられれば、
「少なくともメインで見ている時間軸の、
もう一つ上の時間軸の流れくらいは把握しておこう」
という気持ちになりませんか?
では次に、30分足だけではなく、更に
「4時間足のトレンド方向にも従う」
というフィルターも付け加えたらどうなるでしょうか。
具体的には、
「4時間足の25本移動平均線(MA25)よりレートが上に位置している時だけ
ゴールデンクロスのエントリールールに従う」
とします。
とすると、先の成績は以下のように改善されます。
赤色の下線で引いたところを確認してください。
総損益=+1197.09
PF=1.07
期待利得=+0.35
総取引数=3445
となっています。
4時間足の方向性をフィルターとして追加したので、
更に総取引数が減っていますね。
大きな時間足に従うということは、トレードを厳選する事につながり、
この段階では総取引数の減少の影響が大きくて、総損益は減ってしまっていますが、
PFと期待利得は更に上昇しており、トレードの改善は進んでいますね。
では最後に、30分足と4時間足だけではなく、更に
「日足のトレンド方向にも従う」
というフィルターを付け加えたらどうなるでしょうか。
具体的には、
「日足の25本移動平均線(MA25)よりレートが上に位置している時だけ
ゴールデンクロスのエントリールールに従う」
とします。
とすると、先の成績は以下のように改善されます。
赤色の下線で引いたところを確認してください。
総損益=+1175.80
PF=1.11
期待利得=+0.49
総取引数=2407
となっています。
先と比較すると、
総取引数が1000以上減っているにも関わらず、
総損益はほとんど変わっていない事が分かります。
つまり、この段階でフィルター発動で削除された約1000回分のトレードは
総損益に全く関係のない無駄なトレードだったという事です。
日足の流れに従えば、
5年間で1000回以上の無駄なトレードをしなくて済むわけですね。
これらの結果を見て、どのように感じますか?
「日足なんて5分足トレードには関係ない」
という人もいるかもしれませんが、こうして具体的に数字で見てみると、
日足という大きなトレンドでも、5分足メインのデイトレを行う際には
十分に影響を与えている事がお分かりいただけると思います。
これまでの検証の数字をまとめてみると、以下のようになります。
総損益 | PF | 期待利得 | 総取引数 | |
---|---|---|---|---|
5分足のみ | -2020.32 | 0.96 | -0.19 | 10742 |
5分+30分 | +1519.11 | 1.06 | +0.28 | 5488 |
5分+30分+4時間 | +1197.09 | 1.07 | +0.35 | 3445 |
5分+30分+4時間+日足 | +1175.80 | 1.11 | +0.49 | 2407 |
青枠が最も成績の良い箇所ですが、この検証の表から判断すると、
5分足メインのトレードをするには、順張りトレンドフォローとしては、
少なくとも30分足での優位性は確保してほしいといえるでしょう。
そして、日足まで考慮すれば、無駄なトレードを抑える事ができ、
PFの改善が更に望めるといえますね。
以上は、過去5年間におけるチャートを元にしたテクニカルでの検証ですが、
これをファンダメンタル方面から考えてみると、
2012年の11月には、野田政権から安倍政権に替わり、
いわゆるアベノミクスが始まりましたが、これを分岐点として
円関連の通貨ペアは買い基調から売り基調に大きく転換しました。
その分岐点というのが、
先の日足のフィルターを追加した時の収益曲線のグラフに示した赤い矢印です。
ここがアベノミクスの起点となった日付ですが、
その前後で収益曲線が全く違っていますね。
アベノミクス以前は日足、週足でも緩やかな下降トレンドとなっている事が多く、
仮にMA25の上にレートが上がってきても、
それほど長期間そのポジションを維持する事もなかったので
上記の例題で取り上げたロングの手法は、うまく機能しなかったといえます。
しかし、アベノミクス以降は、強烈な円売り相場が続き、
日足、週足でも明確な上昇トレンドとなっていたので、
上記のような単純なゴールデンクロスの手法でも
有効に機能する場面が多かったといえるでしょう。
また、改めて言うまでもないと思いますが、
上記例で取り上げたゴールデンクロスでの買いとか、
トレンドの判断に25本移動平均線を採用した事とか
大きな時間足に30分足、4時間足、日足を採用した事とかは、
あくまでも参考例であり、これをそのまま推奨しているわけではありませんからね。
具体的なエントリーのタイミングのとり方や
大きな時間足のトレンドの判定方法は、
各トレーダー毎に異なっていて当然で、
自分にとって最も受け入れやすいものを検証して見つけるべきです。
ちなみに、
上記における日足フィルターまで追加した手法は、私は実践では使いません。
確かに期待値はプラスになっていますが、
グラフから判断すると安定度に欠けますね。
収益が横ばいになっている期間が長いのが気になります。
それに対して、私の購入者特典で差し上げている
BreakFake手法での過去5年間の結果とグラフは以下のようになっており、
長期にわたって安定的に右肩上がりの収益曲線になっていますね。
トレードにおけるルールは、このような収益曲線を描くものが理想的です。
“大きな時間足のトレンド方向に仕掛ける優位性をグラフと数字で証明” への1件のフィードバック