初心者に限らず、多くの個人トレーダーはエントリー頻度が多過ぎる傾向にあります。
スキャルピングをすることを目的にして意図的にエントリー頻度を多くして
トレード記録をたくさん取って傾向を分析して対策を練っている、
というのなら全然構わないです。学習のために良いことをしていると思います。
しかし、
「まずはエントリーしなきゃ始まらない。」
「とりあえずエントリーしないと儲からない。」
という意識のもとで、
「稼ぎたい」
という気持ちを前面に押し出して、マイルールも確立していない状態で
ただただエントリーを繰り返しているのだとしたら、それは問題です。
自分自身でトレード頻度が多過ぎることを理解しているでしょうか?
多過ぎると分かっているのに減らすことができないのではないでしょうか?
もしかしたら”トレード依存症“になっていませんか?
ギャンブル依存症の恐怖~分かっているのにやめられない
先日、テレビでギャンブル依存症が特集されていました。
ギャンブル依存症といえば、メジャーリーグで大活躍し
今年もMVPを獲得した大谷翔平選手の通訳をしていた水原一平氏のことを
思い出す方も多いと思いますが、
その特集では相撲の元関脇である貴闘力関の体験談をもとに話が進められていました。
ご存じない方もいらっしゃると思いますが、
貴闘力とは今から25年くらい前まで相撲界で活躍し、
関脇まで昇進した人気力士の一人です。
しかし…彼は相撲の現役時代からギャンブル依存症だったんです。
ギャンブル依存症とは、賭け事への強い執着/欲望によりお金をつぎ込み、現実から逃避して、
最終的には生活破綻に陥る危険性もある精神疾患です。
貴闘力がギャンブルにハマったのは
先輩に競馬場に誘われ、ビギナーズラックで勝ってしまい、
10万円の掛け金が400万円になったことがきっかけでした。
「こんなに簡単に勝てるんだ」
今までの人生で味わったことのない高揚感…
その気持ちの昂りを忘れられず、
それ以来、頻繁に競馬場に足を運ぶことになりますが、
当然ながらビギナーズラックは続かず、だんだん負けがかさむようになります。
そして、負けを取り返そうと更にお金をつぎ込むようになり、
結局、給料の大半がギャンブルでなくなってしまう…
そんな生活を何ヶ月も続けますが、負けるたびに貴闘力は後悔します。
「何やってるんだ俺…」
やめられない原因はドーパミン
ギャンブルをしているからといって、全員が依存症であるとは限りません。
では、依存症とそうでない人との違いはどこにあるのか…
実は、ギャンブル依存症の人にはある特徴があって…
それは…
「このままではマズイ」「やってはいけない」
と自分自身で分かっていながらも衝動を抑えられず、
嘘や言い訳で誤魔化し、不本意ながらもやってしまうのが依存症なんです。
逆を言うと、
ギャンブルをやることにためらいのない人、
心の中で葛藤が無い人はギャンブル依存症ではないと言えます。
先に、貴闘力がビギナーズラックで勝ったことで高揚感を味わったと書きましたが、
その高揚感の正体は”ドーパミン“と言われる神経伝達物質です。
ドーパミンは快楽物質とも呼ばれていて、楽しいことをしている時や、
目標を達成した時、褒められたときなどに分泌されます。
ある行為でドーパミンが分泌されて快感を得ると、
脳がそれを学習して、再びその行為をしたくなります。
つまり、脳が快感や興奮を求めるようになることから、
ドーパミンの事を別名”脳内麻薬“とも呼びます。
結局すべてを失うことに
貴闘力は小結や関脇に定着し活躍していた時には
まだ自分の中で制御ができていました。
しかし、金の使い道はギャンブル優先、給与内だけでは済まされず、
「父親が病気で~」など平気で嘘を付いて友人からも金を借りたり、
更には消費者金融にまで手を出す…
そして、少しの勝ちでは満足できなくなり、大勝ちばかりを夢見て賭けるようになる…
脳内麻薬であるドーパミンは、その量、頻度が増えてくると、
その快楽に慣れてしまい、刺激に慣れてしまい、
楽しいという気持ちが徐々に薄れてきます。
すると、以前のような強い快楽、刺激を求めて
よりハイリスクな、より激しいギャンブルをするようになり
それが、大金を使って大勝ちを狙いに行く、
というように形を変えて表へ現れるようになります。
こうして徐々に制御が効かなくなり、
当然ながら本職の相撲も疎かになって勝てなくなり、
ついに2002年に引退することになります。
貴闘力は引退後、大嶽親方となり指導者の道に進みますが、
それでもまだギャンブルを止められません。
ある日、友人から違法である野球賭博に誘われてしまい、
それがマスコミに知れわたることになり、
最終的には相撲界から追放され、妻とも離婚することになります。
「何やってるんだ俺…」
「このままではマズイ」
分かってる。分かっているんだけど止められない…そして全てを失うことに。
ギャンブル依存症≒トレード依存症
依存症について詳しくない人は、
「意思をしっかり持てばやめられる」
「心が弱いのが原因だ」
なんて適当なことを言いますが、そうではないんです。
意思とか心とか、そんな根性論的な問題ではないんです。
先に書いたように、ギャンブル依存症は精神疾患であり、
脳内麻薬であるドーパミンの過度な分泌が原因なので、
自分ではどうすることもできないんです。
自分の意思でドーパミンの分泌を抑えることができれば良いんですが、
そんな特異な人間は存在しません。
れっきとした病気であり、精神科や心療内科に通ったり、
専門のカウンセリングを受けたりなど適切な診療を受けつづけることで
少しずつ改善していく病気なんです。
そして…ここまで詳しく書けば何となく察しが付くと思いますが、
そうですね、トレードでも同じ反応が脳内で起きる危険性があります。
ギャンブルもトレードも、勝てばお金が増え、負ければお金が減ります。
となると、
マネーリテラシーの低いトレーダーだと、本人が意識してる/していないに関わらず、
ギャンブルとトレードを同一視しても不思議ではないでしょう。
そして、本人が意識しようが/しまいが、そんなことに関係なく、
トレードで勝つと脳内で勝手にドーパミンが分泌され、
それが「気持ち良い」という高揚感になり、
その感情を何度も味わいたくなって、何度もトレードしたくなる…
つまり、トレード依存症に繋がっていくわけです。
脳内でのドーパミンの作用は、
ギャンブル依存症≒トレード依存症
と言えるでしょう。
つまり、表に出てくる症状も似てきます。
先にギャンブル依存症になるとどのような行動/思考になるか説明しました。
- 勝つと気持ち良くなって高揚感を味わう
- 負けを取り返そうとする
- 心の中で葛藤し、後悔しながらもやってしまう
- 嘘や言い訳で自分自身を誤魔化している
- 給与の大半をつぎ込む
- 刺激が足りず大勝ちを狙っている
以上、多くのギャンブル依存症の方がこのような症状になりますが…
これって…そうです、トレード依存症にも全く同じことが言えますね。
トレードで勝ってお金が増えると何とも言えない高揚感を味わいませんか?
トレードで負けると悔しくて、できるだけ早く負けを取り返そうとしませんか?
これ以上トレードしては駄目だと分かっているのにそれでもやってしまいませんか?
デモトレードは意味がない、適当な言い訳で誤魔化していませんか?
給料の大半をトレードにつぎ込んだことを家族に隠していませんか?
少しの勝ちでは満足できずオーバーロットでトレードしていませんか?
もしもこのような行動/思考になっていたら危険です。
冷静になり自分の置かれた状況を真剣に考えなおしましょう。
トレード依存症で勝ち組トレーダーになっている方はいません。
まずは一旦トレードから離れることを推奨します。
私は精神科医ではないので具体的な治療方法は分かりませんが、
心理療法や精神療法などが一般的でしょうか。
本当に冗談抜きで精神科に通うことを検討したほうが良いです。
また、先のギャンブル依存症を特集したテレビでは解決方法として、
- 生活環境を変える
- 付き合っている仲間を変える
- 趣味を増やす
- ギャンブルを止めようとしている自助グループに参加する
などが紹介されていました。
もちろん、トレード依存症もこれらで解決できる可能性があります。
きちんと治してから改めてトレードの事を考えましょう。
その際には、自分の生活スタイルを変えて、家族にはちゃんとトレードの事を話し、
できればトレードの事を話せる仲間を集って
一緒に切磋琢磨したほうが良いかもしれませんね。
トレードって本来一人でするものですが、
依存症が怖いなら仲間がいた方が精神的にも楽でしょう。
為替は逃げません。焦る必要はありません。
ゆっくりトレードと向き合っていきましょう。
ps.
ちなみに、その後の貴闘力ですが…
人生をやり直すために焼き肉店を始めたそうです。
お店は現在も繁盛しているようで、
貴闘力本人が接客しているみたいですね。
でも…ギャンブル自体は今でもやってしまうようです。
完全に断ち切ることはできないけど、
それでも何とか自力で制御できるようにはなっているとのこと。
一平氏はどうしてるんだろう?