前回の記事のような事を書いてしまうと、
「なるほど、トレード方針、戦略が重要なのは分かった。
じゃあ、そのトレード方針、戦略というものを身に付ければいいんでしょ」
となるわけですが、
それが、そうは簡単にはいかないんですよね。
先にも書いたように、トレード方針、戦略とは、
将棋でいうところの “棋風” と同じ意味合いを指しています。
そして、棋風とはその人の性格、人格そのものであると説明しました。
つまり、トレード方針、戦略を身に付けるという事は、
自分の中に、FX用の新たな性格を植え付けさせなければいけない、
という事になります。
今の自分とは違う、別の人格を自分の中に同居させる、
と言っても良いでしょう。
これをたやすくできる人なんて、そうはいないでしょう。
将棋のプロ棋士の場合なら、子供の頃から将棋に触れ、
数多くの対局を指す事で、自分なりの勝てる棋風を身に付ける事になります。
何十年に及ぶ将棋漬けの毎日によって、その人の棋風と性格は
密接に関連し、繋がり、重なり合い、潜在意識のレベルにまで深く浸透する事で、
ほぼ同義のものとなって外面に表れてきます。
つまり、棋風を確立する為の月日が十分にありました。
それに対してFXの場合、
トレードをしようと思い立つ人のほとんどは成人になってからです。
つまり、既にその人の性格が形作られた状態から、
FXを始めようとしている人がほとんどです。
という事は、今の自分の性格とは関係なく、
後発的に自分の中にトレード戦略を取り入れていかなければならなくなります。
人は成人になるまでに、
その人の人格形成に関わる数多くの出来事を経験しています。
子供の頃に親から受けた教育、
幼稚園、小学校、中学校、高校、大学と受けてきた横並びの教育、
社会人として突出する事もなく、お給料を得る為に働き続ける事、
私たちの日常生活で見聞きしたもの、そして、それらから受けた価値観、
残念ながら、そうした経験の大部分が
FXにとってはマイナスに作用するものばかりです。
つまり、もうすでに負け組の思考パターンが、
潜在意識の中にしっかりとこべりついている状態から
FXを始めている人が大多数という事です。
日常感覚でトレードすると、、、
例えば、普通の人間の感覚では、お店で何か商品を買う時には、
なるべく安く買いたいと思うものです。
安く買う事ができれば、その分お買い得という心理が働きますね。
これはほとんどの人間が持っている感覚です。
しかし、そうした心理を引きずってFXをするとマイナスに作用します。
FXにおけるブレイクの場面を考えてみましょう。
上値抵抗線を越えてきたので、今からロングエントリーをしようとします。
しかし、ブレイクしたのはよいが、
その後1PIPSでも安くエントリーしたいために、
少しの押しを待ってしまう事がありませんか?
で、結局押す事がなく、そのままスルスルと上昇してしまい、
エントリーのタイミングが遅れてしまう、
もしくは、エントリーそのものができなかった。。。
これは、日常の「安く買えればお買い得」という当たり前の感覚が
FXという世界で、悪い方へ作用してしまった結果です。
もう一つの例を挙げると、学生時代の夏休みの宿題を思い出してください。
夏休みの宿題を毎日少しずつ計画的にやっている人なんてほとんどいなくて、
多く人は宿題なんてあと回しにして、
夏休みの終わり頃になって、嫌々ながらまとめてやる、
というパターンの人が多かったでしょう。
人間というのは規律がないと、
嫌な事はどうしても後回しにしてしまう心理が働いてしまうものです。
こうした心理を引きずってFXをするとマイナスに作用します。
FXにおける含み損の場面を考えてみましょう。
思惑と反対方向にレートが動き、所定のSLの位置まで来た場合、
ルール上はここで損切りしてトレードを終わらせなければいけません。
しかし、嫌な事は後回しにしたいという心理が働き、
その場で損切りをすることなく、もうしばらく様子を見ようとしてしまい、
結局元の位置に戻らず、含み損が拡大してしまった。。。
これは、日常の「嫌な事は後回し」という誰でも持っている感覚が
FXという世界で、悪い方へ作用してしまった結果です。
上記の例のように、普段の日常感覚、価値観でトレードを繰り返していると、
誰でも遅かれ早かれ、FX市場から退場に追い込まれてしまうでしょう。
FX用の勝てる性格を潜在意識に上書きできるか
ほとんどのトレーダーが逆張り思考になっているのも、
含み損を後回しにしてしまうのも、
含み益をすぐに手じまってしまうのも、
トレード中にお金の事を考えてしまうのも、
負けたことを悔しがってしまうのも、
なるべく楽に稼ぎたいと思ってしまうのも、
そうならざるを得ない環境で育ち、そうならざるを得ない教育を受けて、
それらが潜在意識のレベルまで深く根付いているからです。
つまり、成人になった今から、
FXで勝つ為の思考パターンをトレード戦略に反映させる為には、
その人の何十年にもわたる人格形成を否定して、
今持っている人格とは別の人格を自分の中に作り上げ、
FX用の勝てる性格を潜在意識レベルで上書きする必要があるわけです。
もう一度言います。
トレード戦略を身に付けるとは、FXにおける自分の性格を変える事と同意です。
しかし、大人になってから自分の性格を変えれる人はほとんどいません。
だからFXは難しいんです。
誰でも自分の主義主張があり、自分の価値観を持っており、
これまで培ってきた自分なりの世界観をもっているでしょう。
そして、それらを否定されるのを快く思う人はいないでしょう。
自分が何十年もかけて信じてきたことを
捨て去る事ができる人なんてそうはいないでしょう。
トレードで勝つ為の戦略、方針を書籍などの “言葉” で学んだとしても、
その人の性格、主義主張、価値観が、
その戦略、方針を潜在意識レベルでは拒絶しており、
どうしても自分の中に取り込むことができません。
トレンドフォロー、、、分かってるんです。
でも潜在意識が受け付けてくれないんです。
損小利大、、、分かってるんです。
でも潜在意識が受け付けてくれないんです。
だからFXは難しいんです。
以上、トレード戦略の重要性とそれを身に付ける事の難しさについて
数回の記事にわたって解説しました。
ちょっと長過ぎましたね。
多くのトレーダーが手法ばかりに興味を持って、メンタルの話となると、
どうしてもおざなりになってしまう傾向にありますが、
勝ち組トレーダーになる為には、
いつかは自分のメンタルと向き合わなければいけません。
メンタルといっても、
「気持ちをしっかり持て」
とかの根性論を持ち出す気はありませんし、
そもそもFXで勝つ為には根性論は必要ありません。
しかし、潜在意識レベルでトレード戦略の重要性を理解するには、
それ相当の月日が必要になることも事実です。
それまではFXから退場せずに続けていきたいものですね。
“棋風と戦法、方針と手法、戦略と戦術、幹と枝葉~潜在意識を上書きできるか” への1件のフィードバック