自分のことは自分が一番よく分かっている。
確かにそうなんですが、だからといって
常に自分にとって適切な判断ができているとは限りません。
人間の行動の90%以上は無意識で行っているので、
知らないうちに間違った行動をしている可能性もあります。
トレードなら尚更です。
「あの時に買っておけばよかった」
「あの時に決済していればこんなことにはならなかった」
後で振り返れば、別の適切な選択ができたはずなのに、
実際にその場面に直面すると、冷静で客観的な判断ができずに、
つい、間違った判断を下してしまう。。。
それもこれも、自分の心理を分かっていないからです。
トレードに関連する心理学用語
以下、トレーダーが陥りやすい3つの罠を心理学の用語を用いて解説します。
それらは、
- 同調圧力
- 確証バイアス
- 認知的不協和
です。
トレードにおける同調圧力
ある日、
Aさんがトレードに関するYouTubeを視聴していると
人気のインフルエンサーが
「米10年債利回りが上昇するからドル円は買いだ!」
と、もっともらしい見解を述べていました。
コメント欄を見ると
「ドル円をロングしてみます!」
「参考になりました!」
「有益な情報ありがとうございます!」
と肯定的なコメントが多く載せられていました。
次に、ツイッターを確認すると、
フォロアー数の多いインフルエンサーも
ドル円の買いを推奨していて、
そのツイートに数多くの「いいね」が付いていました。
「なるほど。みんなドル円をロングしているんだから大丈夫だろう」
と、Aさんもドル円をロングした。。。
同調圧力とは、
無意識のうちに周りの意見に同調するように
自分で自分に圧力をかけてしまう心の動きのことを指します。
上記の場合、Aさんは各種SNSを見る前は、
ドル円に対しては中立な立場でしたが、
自分以外の周りの意見に影響を受けて、
自身の判断が歪められてしまいました。
そして、歪められたこと自体に本人が気づいていないのが問題です。
周りの意見を参考にすることは悪くはないですが、
それに流され、自身の判断力を放棄すると
トレードで成功することはできなくなります。
トレードにおける確証バイアス
Aさんがポジションを持ってから数日、
ドル円に大きな動きはありません。
やることがなく、ニュースをチェックしていると、
ロイターのアナリストが
「ドル円の日足チャートはテクニカル的に上げ過ぎなので
ここからは下落する可能性が高い」
と書いていました。
しかし、ブルームバーグの記事では
「米では良好な経済指標が続いており、
当面のドル円は上昇するだろう」
と書いていました。
Aさんはブルームバーグの記事を見て安心し、
ドル円のロングポジションを持ち続けました。。。
確証バイアスとは、
自分にとって都合の良い情報だけを集めて信じ、
自分にとって都合の悪い情報は軽視して信じない
という心の動きのことを指します。
上記の場合、ロイターの記事とブルームバーグの記事とで
どちらが正しいかは誰にも分からないはずですが、
自分のポジションの正当性を認めたいがために、
無意識のうちに自分にとって肯定的な意見だけを受け入れてしまいます。
そして、その心理に本人が気づいていないのが問題です。
ニュースをチェックすること自体は悪くはないが、
フラットな心理状態でなければ、
偏った情報ばかりを集めてしまい、
そこからの投資判断も誤ることになります。
トレードにおける認知的不協和
Aさんがポジションを持ってから更に数日経過すると、
ドル円が徐々に下がってきたではありませんか!
不安な気持ちになりつつも、しばらく様子を見ていると、
チャートは明らかに下降トレンドになり、
当初予定していたストップの位置まで下げてきてしまいました。
しかし、
「日銀の量的緩和政策はこのまま続くので、
あと少しでドル円は上昇に転じるはず」
と思い込み、
ここで損切りするのは勿体ないと判断し、
逆に、ナンピン買いで対処しました。。。
認知的不協和とは、
整合性の取れない2つの矛盾する事実を認知して不快感を覚えた場合、
その不快感を解消するために不合理な言い訳を用意しようとする
心の動きのことを指します。
上記の場合、ロングポジションで上昇を期待する自分と
実際には下降トレンドになっている事実という2つの狭間に
本人は不快感を覚えています。
そこで、この整合性の取れない2つの不協和を
「量的緩和が、、、」という言い訳と”ナンピン”という行動で
少しでも軽減させようとしているわけです。
そして、その心理に本人が気づいていないのが問題です。
これは人間であれば誰でも起こりうる自然な心の動きなので、
仕方ない面もありますが、
常にチャートの事実に従う行動を心掛ける必要があります。
以上、トレーダーが陥りやすい3つの心理的な落とし穴でした。
同調圧力でポジションを持ち、
確証バイアスで自分を納得させ、
認知的不協和でナンピンを膨らませる。。。
最悪なトレード戦略ですが、
こうしたことを無意識のうちにやっているトレーダーは多いです。
常に自分の心の内側を見つめ、
歪んだ心理から抜け出し、事実のみで行動できるようにしましょう。