先日、SNSをチェックしていると以下のような書き込みがありました。
「円は無価値になると聞いたから151円でドル円をロングしたのに
今は144円になっている。話が違うだろ!」
「日本は他の先進国と比べて経済成長してないから円安は当然と聞いて
ドルを買ってきたのに何で急激に円高になるの?」
確かに今週の為替相場は週末にかけて一気に円買いに傾き、
ドル円は暴落して一時141円台にまで下げました。
これは今年の年初来高値151円台から10円ほども下げたことになります。
ドル円の日足チャート
ドル円の1時間足チャート
今回のドル円暴落は、植田日銀総裁が
「年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になると思っている」
との発言をしたことがきっかけです。
チャレンジングとは、
YCCやマイナス金利といった大規模な金融緩和を解除し、
いわゆる「出口」に向かうことを指しています。
出口に向かえば、これまでのような国債の買い入れは無くなり
金利を無理やり抑え込むこともしなくなるので、
今の日本のインフレ、物価高を考えれば、それに伴った金利上昇思惑が広がり、
円が買われるのも当然の動きでしょう。
しかし、今回の暴落前には、
数多くのアナリスト、インフルエンサー、著名人が
各種SNS、ユーチューブ、記事投稿などで
「
「 」
「 」
というように円安を危惧し、煽ってくる書き込み、動画を発信していたのも事実です。
そして、そうした報道に影響を受けて(心配になって)
急いでドルを買った人も多かったでしょう。
そして今回、ドル円が暴落したことでドルを買ったことを後悔し、
冒頭の書き込みのように、
アナリスト、インフルエンサー、著名人に文句を言いたくなる気持ちも分かります。
しかし…
アナリスト、インフルエンサー、著名人と
彼らを信じてドルを買ったあなたとでは、
“見据えている将来の時間軸、時間経過が全く異なっている”
という事実に気付いていますか?
モメンタム、テクニカル、ファンダメンタルズの割合の違い
トレードは執行する時間軸によって、
スキャルピング、デイトレ、スイング、ポジショントレード
というように分けることができます。
スキャルピングとは、おおよそ数分~数十分で完結させるトレード、
デイトレとは、おおよそ数十分~~数時間で完結させるトレード
スイングとは、おおよそ数日~数週間で完結させるトレード
ポジショントレードとは、数ヶ月~数年で完結させるトレード
になるでしょう。
また、トレードする際の材料は、
モメンタム、テクニカル、ファンダメンタルズ
に分けることができ、これらはトレードする時間軸によって
重要度というか、優先度の割合が異なってきます。
以下、個人的な感覚で言わせてもらうと、
スキャルピングであれば、
モメンタム(50%)、テクニカル(50%)、ファンダメンタルズ(0%)
デイトレであれば、
モメンタム(20%)、テクニカル(70%)、ファンダメンタルズ(10%)
スイングであれば、
モメンタム(10%)、テクニカル(60%)、ファンダメンタルズ(30%)
ポジショントレードであれば、
モメンタム(0%)、テクニカル(10%)、ファンダメンタルズ(90%)
くらいになると思っています。
つまり、スキャルピングを行うのであれば
ファンダメンタルズ(経済的基礎条件)なんて全く必要なく、
モメンタム(その場の勢い)を感じ取り、
テクニカル(チャート分析)によって利益を上げていきます。
デイトレを行うのであれば、
ファンダメンタルズを多少考慮しても良いがそれほど重要ではなく、
テクニカルに従ってトレードするのが最も効果的です。
ポジショントレードであれば、
逆にモメンタムなんて全く関係なく、
長い目で見たファンダメンタルズ分析が最も重要になります。
トレードする際、そして、自分のシナリオを構築する際には、
自分がどのくらいの未来を見据えているのか、
自分の時間軸を明確にする必要があります。
自分の時間軸が明確になれば、
モメンタム、テクニカル、ファンダメンタルズ
のうちどれを優先すべきなのかもはっきりします。
アナリスト、インフルエンサー、著名人は長期的視野に立っての発言
以上を前提にして…
では、先のアナリスト、インフルエンサー、著名人は
どのくらいの未来を見据えて
「
「 」
「 」
と発言したんでしょうか?
常識的に考えれば、
数ヶ月~数年単位の未来を見据えて発言したと解釈すべきでしょう。
今日明日にもドル円が300~500円になるなんて
そんな意味で発言していないことは明白です。
もちろんここでは彼らの主張が正しいのか間違いなのかを説いているのではありませんよ。
ドル円が将来500円になるのか、それとも100円になるのか、
そんな事は誰にも分かりませんし、
円安主張論にも円高主張論にもそれぞれ言い分があり、
それらを咎めるようなことは私はしません。
ただ彼らの主張は今日明日のドル円について発言しているのではなく、
数ヶ月~数年単位の未来のドル円についての発言だと言いたいんです。
それを参考にするのもしないのも各自の勝手ですが、
仮に参考にするのであれば、
彼らと時間軸を合わせなければいけません。
つまりこれらの発言は、
数ヶ月~数年単位の未来のドル円のファンダメンタルズ的予想だと理解して、
ドル円に投資する必要があります。
いわゆる、ポジショントレードという認識です。
にも関わらず、
冒頭のように彼らの発言に影響されてロングし、
「円は無価値になると聞いたから151円でドル円をロングしたのに
今は144円になっている。話が違うだろ!」
と言って怒るのはおかしいと思いませんか?
この人はなぜ怒っているのか…
それはポジショントレードをしていないからです。
おそらくデイトレ、スイングの時間軸でトレードをしている感覚なんでしょう、
だからポジション保有後に7円以上も下がったことに怒っているんです。
なぜなら、通常のデイトレ、スイングならば、
1円でも下がれば通常当たり前のように損切りしますからね。
この方は、アナリスト、インフルエンサー、著名人が発言した
数ヶ月~数年単位の未来予想を
デイトレ用の数時間後の予想 or スイング用の数日間後の予想と
知ってか知らずか、勘違いしたわけです。
そして、想定以上に値下がりしたと勘違いして怒っているんです。
アナリスト、インフルエンサー、著名人が円安を予想したからといって、
そのまま一直線に、1円も下がらず、300~500円を達成するなんて
彼らもそんな都合の良いことは考えていないはずです。
数ヶ月~数年単位の時間をかけて、
数円以上の値下がり値上がりを何度も繰り返し、
チャート上は波を描きながら300~500円を達成するだろう
と彼らは予想している、と考えるのが妥当です。
そうした彼らの予想を信用してドル円をロングしたのなら、
10円くらいの下落などは当たり前のように甘受しなければいけませんし、
逆に現在、円高になってドル円が暴落したことを喜ぶべきです。
なぜなら、下がった分だけ安くドル円が仕込めるんですから、
将来ドル円が上昇した時により多くの利益が得られるですから、
喜んで追加でロングすべきです。
怒るのではなく喜ぶべきなんです。
その後、この方が含み損のドル円のロングポジションを閉じかたどうかは分かりません。
まぁ、ネットに書き込んで憂さを晴らしたいだけかもしれません。
というか、そもそも論として、
アナリスト、インフルエンサー、著名人を信用してポジションを持つ事自体が
トレードリテラシーの低い行動なんですが…